地方なら6,000円、都心では1万円近く——同じそろばんなのに、住む場所だけでこれだけの月謝差が生まれます。しかも、通わせる子どもの数が多いほど、その差はじわじわ響いてきます。今回は、そろばんを続けていく上で向き合っておきたい、お金の話です。
現在、上の子(そろばんを習うことにした本人)は4歳、下の子は1歳です。同じくらいの年齢のお子さんを育てている方にも参考になればと思い、できるだけ具体的な数字で書いておきます。
都心と地方、月謝はこれだけ違う
そろばん教室の月謝相場を調べてみると、地域によってかなりの差があることが分かりました。
都市部のそろばん教室は、教室の家賃や講師の人件費が高いため、月謝は6,000〜10,000円前後とやや高めになる傾向があります。一方で、地方の教室では4,000〜7,000円程度が中心とされています。
もう少し細かく見ると、東京都心部では月8,000円〜9,000円程度と高めの設定が多く、郊外エリアでは月6,000円前後とやや安くなる傾向があるという情報もありました。沖縄の月謝の平均は、週に3〜4回、各1時間で4,000〜5,000円という例も見つかり、地域差は数千円単位で存在するようです。
通学型のそろばん教室の月謝は、全国平均で月4,000円〜12,000円が相場とされており、その中でも都市部は高め、地方は安めという傾向は、複数の情報源で共通していました。
我が家が住んでいるのは、都心の中でもタワーマンションが多く、比較的裕福な家庭が多いと感じるエリアです。そういう土地柄もあってか、そろばんの月謝も、地方の相場と比べると高めの水準になっています。土地代や人件費を考えれば当然のことで、そこに文句を言うつもりはありません。ただ、「地方なら6,000円程度で済むものが、都心では1万円近くになる」という差は、かなり大きいと感じています。
参考までに、我が家が選んだ教室の場合、週2回(月8回コース)で、月謝は1万円強の予定です。地方の週2回相場(5,000〜6,000円程度)と比べると、ほぼ倍近い金額になっている計算です。
2人分だと、じわじわ響いてくる
我が家には、もう一人子どもがいます。いずれ下の子もそろばんを始める可能性を考えると、この月謝差は「1人分ならまだしも、2人分だと地味に効いてくる」というのが実感です。
仮に月謝が地方相場より3,000〜4,000円高いとすると、2人分では月6,000〜8,000円の差になります。年間では7万〜10万円近く、それが小学校卒業までの数年続くと考えると、決して無視できない金額になってきます。
だからといって、そろばんをやめる、という判断にはなりません。ただ、こうした費用感を最初から織り込んでおくことは、長く続ける上で大事なことだと思っています。
中学受験にかかる費用を調べてみた
我が家は中学受験をする予定は今のところありませんが、周りには中学受験を考えているご家庭も多く、実際にどれくらいの費用がかかるのか、一度調べてみました。
(中学受験におけるそろばんの位置づけ、メリット・デメリットについては、別記事「そろばんは中学受験に効く? 知っておきたいメリットと落とし穴」で詳しくまとめています。)
首都圏の大手4塾(SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー)に、小学4年生から6年生までの3年間通った場合の総額を、調べた範囲で表にまとめました。
| 塾 | 3年間の総額(目安) | 月額換算 |
|---|---|---|
| SAPIX | 約256万〜330万円 | 約7万〜9万円 |
| 日能研 | 約249万円 | 約7万円弱 |
| 四谷大塚 | 約300万〜320万円 | 約8万円台 |
| 早稲田アカデミー | 約240万〜320万円 | 約7万〜9万円 |
これは、通常の月額授業料だけでなく、季節講習(春期・夏期・冬期)、特別特訓、模試代なども含めた金額です。特に6年生になると、授業料以外の費用だけで年間数十万円〜100万円近くに膨らむケースもあるとされています。
さらに、中学受験をして私立中学に進学した場合、入学後の学費も公立とは大きく異なります。文部科学省の調査を基にした比較も、表にまとめておきます。
| 区分 | 公立中学 | 私立中学 |
|---|---|---|
| 3年間の学習費総額 | 約163万円 | 約467万円 |
| 年間の学校教育費 | 約13万円 | 約106万円 |
両者の差は300万円以上にのぼり、学校教育費だけで見ると私立は公立の8倍近くという結果でした。
塾代と入学後の学費を単純に足し合わせると、中学受験をして私立に進学した場合、小学4年生から中学卒業までの6年間で、500万円〜700万円規模の費用がかかる可能性がある、ということになります。もちろん、これは大手塾に通い、私立に進学した場合の一例であり、家庭や志望校によって金額は大きく変わります。
周りを見て感じたこと
我が家が住んでいるエリアは、タワーマンションに住む世帯が多く、周りを見ていると、収入水準がかなり高いご家庭が多いように感じます。習い事にかけられる金額も、我が家とは桁が違うと感じることがあります。
それは、子どもに買い与えているものにも表れているように感じます。誤解のないように書いておくと、これは「贅沢にわがままを許している」という話ではありません。英語教材の定番として知られるディズニーの英語システムのような、教育的にきちんとした高額教材や、質の良い知育玩具。あるいは、教育的な意味合いがなくても、うちでは置き場所や予算の都合でとても買ってあげられないような、大きな箱に入った本格的なおもちゃ。そうしたものを、当たり前のように用意できるご家庭が、周りには少なくありません。我が家の場合、おもちゃはいただきものがほとんどです。
以前の記事では「教育熱心で、経済的にも余裕のあるご家庭が多い」というように書きましたが、正確に言うと順番が逆なのかもしれません。経済的に余裕があるからこそ、教育にも余裕が生まれる、というのが実態に近いのだと思います。中学受験の費用感を調べてみて、なおさらそう感じました。
そういう環境の中で、我が家はお金のある家庭と同じようには戦えません。だからこそ、限られた予算の中で、何にお金と時間をかけるかを、きちんと選び取っていく必要があると考えています。
そろばんは、費用対効果が大きいと思う
中学受験の費用感を知った上で、改めてそろばんの月謝を見ると、費用対効果はかなり高いと感じます。
週2回で月1万円弱という金額は、それ単体で見れば安くはありません。ただ、中学受験塾の月換算7万円〜9万円という金額と比べると、桁が一つ違います。そして、そろばんで身につく計算力は、検定という形で誰の目にも分かる形に残り、しかも一度取得すれば有効期限もありません。
うちはうちなりに、限られた予算の中で、子どもに何を残してあげられるかを考えなければなりません。本人にその気がないなら、それはそれで仕方のないことだと思っています。ただ、もし将来、大学まで進んで勉強したいという気持ちが本人に芽生えたときに、その選択肢だけは残しておいてあげたい。中学受験という道は、我が家には難しくても、大学で学ぶ可能性まで閉ざしてしまうことのないように、今できることをしておきたいと考えています。
大きな塾代をかけられない以上、我が家は基本的に、家庭学習でやりくりしていくしかないと考えています。そのときに一番大事になるのは、親が隣についていなくても、本人が自分の力で学習を進めていけるかどうかだと思っています。以前の記事でも書いた通り、そろばんを選んだ理由の一つに「自分で勉強できる子になってほしい」という思いがありました。決まった曜日に教室へ行き、自分で課題に向き合い、できるようになったら次に進む。この経験の積み重ねが、将来、家庭学習を中心に据えたときの土台になってくれるのではないかと考えています。
そろばんは、そのための最初の一歩として選びました。この先、具体的にどんな形で家庭学習を組み立てていくつもりなのかは、また別のところで詳しく書いていきたいと思います。
これから求められる力と、そろばん
もう一つ、そろばんに期待していることがあります。少し先の話になりますが、書いておきたいと思います。
高校の学習指導要領は、次の改訂に向けた議論が進んでいます。その中でキーワードとして挙がっているのが、「社会につながる数学」と「文理横断」です。AIやデータサイエンスの普及を背景に、数学が一部の理系生徒だけのものではなく、すべての高校生に必要な基礎教養として位置づけ直されようとしています。
具体的には、これまで「数学A・B・C」に分散していた確率・統計・数列などの内容を整理し直し、必履修科目の「数学I」に、数学の全体像や社会での活かし方を学ぶ「数学ガイダンス」、社会の課題をデータで読み解く「社会を読み解く数学」といった新しい内容を設ける方向が示されているようです。文系・理系を問わず、データや数字を扱う力が、これまで以上に重視されていく流れだと感じます。
私自身、ニュースなどを見ていて、日本は理系人材の不足がずっと指摘されていると感じています。この先は、いわゆる文系の仕事であっても、統計やAIリテラシーのような数学的な素養が当たり前に求められる時代になるのではないか、そんな予感があります。もしかしたら、「文系・理系」という分け方自体が、今後は薄れていくかもしれません。
この予感を裏付けるような、具体的な動きも見つけました。文部科学省が設けた「成長分野転換基金」の中に、「大規模文理横断転換枠」という制度があり、これは一件あたり最大40億円という規模で、大学の理系学部拡充や文理融合教育への転換を支援するものだそうです。青山学院大学(統計データサイエンス学環の新設)、早稲田大学(商学部の定員見直し)、立命館大学(生命科学部の拡充)など、有名私立大学11校が、この基金を活用して動き出しているとのことでした。
背景には、2040年に向けた深刻な理系人材不足の予測があるようです。国立大学では学生の半数以上が理系である一方、私立大学では3割弱にとどまっているという指摘もあり、日本の学生の多くを受け入れる私立大学が変わらなければ、社会全体の構造転換は進まない、という危機感が背景にあるとのことでした。
支援の条件も興味深く、理系学部の定員を増やす場合は、同数以上の文系学部の定員を減らすことが求められるそうです。単純な規模拡大ではなく、「文系から理系への再編」そのものが狙いだということです。これに伴い、一部の大学・学部では、これまで数学が不要だった入試に数学I・Aが必須化されたり、入学後にデータサイエンスやAIを必修化する学部が増えたりしているとのことでした。「人文社会科学の専門性×デジタルスキル」という組み合わせが、これからの大学教育で重視されていく、という説明にも納得感がありました。
もちろん、これは「文系が不要になる」という話ではなく、人文社会科学の専門性に、数理やAIの知識を組み合わせていく、という本質的な転換だとされています。それでも、「文系だから数学は関係ない」という考え方が、少なくとも大学受験・大学教育のレベルでは、もう通用しなくなりつつあるのだと感じました。
そう考えたとき、そろばんの価値は、単なる計算力だけではないように思います。計算そのものは、電卓やスマートフォンがあれば済んでしまいます。それでも、数字を頭の中でイメージし、感覚的に操作できるようになる経験には、電卓では代替できない何かがあるのではないか。うまく言葉にできないのですが、この直感を、今後の記事の中でもう少し掘り下げて考えていきたいと思っています。
この記事を書く理由
こうした「お金の話」を書くかどうかは、正直迷いました。ただ、同じように「教育熱心な地域に住んでいるけれど、教育費には限りがある」という家庭は、決して少なくないと思います。
そういう方にとって、地域ごとの月謝相場や、中学受験にかかる現実的な費用感は、率直に知りたい情報のはずです。そろばんは決して安い習い事ではありませんが、青天井でお金をかけなくても、工夫次第で続けていける習い事でもあると思っています。
これからも、月謝以外にかかる費用(教材費、検定料など)も含めて、実際の金額をできるだけ正直に記録していきたいと思います。
次回は、「そろばんは週1回と週2回、どちらがいい?」について書きます。
参考文献・参考資料
- 「月謝はいくら?そろばん教室の相場とコスパの見極め方」よみかきそろばんくらぶ、URL: https://online-yomikakisoroban.com/column/?p=335
- 「そろばん教室の月謝相場|通学・オンラインの費用を770名指導の教室が徹底解説」KSJ、URL: https://kawakami-school.com/soroban-monthly-fee/
- 「そろばんの月謝は高い?安い?平均相場と教室の選び方について」ネットdeそろばん、URL: https://www.net-de-soloban.com/column/abacus/price/
- 「そろばん教室の月謝はいくら?月謝の相場と教室の選び方などを解説」そろばんToz、URL: https://to-z.net/blog/7095/
- 「中学受験の塾費用はいくら?トータル料金やそれ以外にかかるお金を解説」マネきっず、URL: https://moneykids.co.jp/cram-school-for-junior-high-school/
- 「中学受験の大手4大塾の年間費用(料金)を比較!」ダイヤモンド教育ラボ、URL: https://diamond.jp/educate/articles/juku-hiyou/73/
- 「中学校3年間で平均300万円以上の差!!公立学校進学者と私立学校進学者での学習費」野村證券Fin Wing、URL: https://www.nomura.co.jp/fin-wing/column/study_expenses_for_junior_high/
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」
- 「どう変わる 高校学習指導要領【数学】」教育新聞、URL: https://www.kyoiku-press.com/post-311735/
- 「有名私大の理系シフト」YouTube、URL: https://youtu.be/FBEGVrEI9Xg
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